「耐圧とは何かを知りたい。
耐圧はどこで決まるの?
耐圧を上げることによるデメリットはあるの?」
こういった疑問にお答えします。
本記事の内容
- 半導体の耐圧とは何かを説明します
- 半導体の耐圧を調整するやり方
- 耐圧を上げることによるデメリット
この記事を書いている私は、ディスプレイ用ICの開発を20年近くやってきました。
特許は20件以上出願、登録しています。
こういった私が解説していきます。
半導体の耐圧とは何かを説明します
半導体の耐圧は「半導体製品が壊れない最大の電圧」となります。
この電圧の値は仕様書の絶対最大定格に記載されていますので、耐圧は「絶対最大定格の値」と言うこともできます。
半導体製品はトランジスタで構成されているのですが、そのトランジスタはダイオードが基本になっています。
そのためダイオードに逆バイアスがかかってもブレイクダウンしないようにする必要があります。
つまり半導体製品内部のダイオードがブレイクダウンしない最大の電圧が耐圧となるわけです。
例えば5Vで動作する製品があったとしますと、耐圧は7Vくらいになります。
動作は5Vなので通常は5Vを印加するのですが、電圧変動で一瞬8Vとかが印加されてしまうと耐圧の7Vを超えるので半導体製品は壊れます。
こんな風に一瞬でも超えてしまうと半導体製品が壊れてしまう電圧が耐圧となります。
半導体の耐圧を調整するやり方
半導体の耐圧を調整するやり方は「不純物濃度を調整する」ことです。
これは不純物濃度を調整することでダイオードの空乏層の距離を決めるためです。
空乏層の距離が大きくなると電界強度が確保できるので、耐圧を上げることができます。
電界強度は「電圧÷空乏層の距離」となるからです。
つまり空乏層の距離を大きくすると、耐圧を上げることができます。
空乏層の距離と不純物濃度の関係について下の図を御覧ください。
不純物濃度を変えることで空乏層の距離を決めることができます。
まとめますと「不純物濃度を調整して空乏層の距離を決めることで、耐圧を調整することができる」ということになります。
耐圧を上げることによるデメリット
耐圧を上げることによるデメリットを3つご紹介します。
- 抵抗値が大きくなる
- 面積が大きくなる
- 静電気に弱くなる
1.抵抗値が大きくなる
耐圧を上げるとトランジスタの抵抗値が大きくなります。
これは耐圧を上げるために不純物濃度を低くするため、自由電子やホールの数も少なくなるためです。
5Vトランジスタと20Vトランジスタでは、5Vトランジスタの方が大きい電流を流すことができます。
耐圧を上げるとトランジスタの抵抗を低くするのが難しくなります。
2.面積が大きくなる
耐圧を上げるとトランジスタの面積が大きくなります。
これは耐圧を上げるために空乏層の距離を大きくする必要があるからです。
5Vトランジスタと20Vトランジスタでは、20Vトランジスタの方が4倍の距離が必要となります。
縦と横がそれぞれ4倍に広がるので、面積は16倍になってしまいます。
耐圧に比例してトランジスタの面積は大きくなります。
3.静電気に弱くなる
耐圧を上げるとトランジスタは静電気に弱くなります。
静電気に関しては速くブレイクダウンしてエネルギーを逃したほうが良いのですが、耐圧を上げてしまうと静電気が入ってもブレイクダウンが遅くなりエネルギーが集中して壊れるからです。
5Vトランジスタは2kVの静電気で大丈夫でも、20Vトランジスタでは1kVの静電気で破壊するというケースもあります。
耐圧を上げることでトランジスタの静電気対策が難しくなります。
まとめ
半導体の耐圧とは何かを説明しました。
少し技術的な内容だったかもしれませんが、この記事を読んでイメージだけでも掴んでいただけたらありがたいです。
ダイオードのpn接合についてはこちらの記事で解説していますのでぜひ御覧ください。
>>pn接合についてわかりやすく説明します【イメージできれば簡単です】