「ESDとは何かを知りたい。
静電気はどこから印加されるの?
ESDはどうやって対策しているの?」
こういった疑問にお答えします。
本記事の内容
- 半導体のESDとは何かを説明します
- 静電気が印加される3つのモデル
- 半導体設計でのESD対策
この記事を書いている私は、ディスプレイ用ICの開発を20年近くやってきました。
特許は20件以上出願、登録しています。
こういった私が解説していきます。
半導体のESDとは何かを説明します
ESDとは静電気放電のことで「Electrostatic Discharge」の略となります。
少し簡単に言ってしまいますとESDとは静電気のことです。
この静電気は半導体製品が故障する原因の一つになっています。
したがって半導体製品の信頼性を確保するためには、このESDに対してきちんと対処しておくことが必要となります。
例えば冬などドアノブを触った瞬間に静電気でバチッとくることがあるかと思います。
触ったものがドアノブでなく電化製品であった場合、その電化製品に静電気が印加されます。
そして電化製品に組み込まれている半導体製品にも静電気が印加されることになります。
こんな感じで半導体製品に印加される静電気がESDとなります。
ここで静電気といっても乾燥している冬だけでしょう?と思った方もいらっしゃるかもしれません。
確かに乾燥していない時期であれば静電気の発生はないように思われます。
しかし乾燥していなくても静電気の発生がゼロになるわけではありません。
静電気は絶縁物の摩擦で発生しますので、人体にしても機械にしても動きがあるところは静電気が発生する可能性があるからです。
そのため半導体製品の故障の原因となる静電気はESDとして信頼性項目の一つとなっています。
静電気が印加される3つのモデル
静電気が半導体製品に印加される3つのモデルは次のとおりです。
- 人体モデル
- マシンモデル
- デバイス帯電モデル
1.人体モデル
これは人の体を通して静電気が半導体製品に印加されるモデルです。
人体モデルはHuman Body Modelの略でHBMとも呼ばれています。
主に製品を出荷して実際に使われる時に印加される静電気となります。
例えば冬など乾燥した時期にカーナビなどを触った瞬間にバチッときて、静電気が印加されるといった感じです。
この人体モデルは製品設計によるESD対策が必要です。
2.マシンモデル
これは装置や道具を通して静電気が半導体製品に印加されるモデルです。
マシンモデルはMachine Modelの略でMMとも呼ばれています。
主に半導体製品を組み込む製造現場で印加される静電気となります。
道具とは実装するときに使うハンダごてなどがあります。
半導体製品を基板に実装しようとして、ハンダごてをあてた瞬間に静電気が印加されるといった感じです。
製造現場では人体や装置などに静電気が帯電しないようにする対策が必要です。
3.デバイス帯電モデル
これは半導体製品そのものが静電気に帯電するモデルです。
デバイス帯電モデルはCharged Device Modelの略でCDMとも呼ばれています。
主に製造現場で半導体製品を保管しているときに帯電する静電気となります。
半導体製品が帯電している状態で基板に実装しようとすると、半導体製品から基板に向かって静電気が放電するといった感じです。
半導体製品を保管する場合は帯電しないようする対策が必要です。
まとめますと、静電気の発生元は主に①人体、②装置、③半導体製品となります。
また静電気が印加される場面は、①半導体製品の使用時、②半導体製品の実装時、③半導体製品の保管時となります。
したがって3つのモデルを「発生元/場面」で整理しますと次のようになります。
・人体モデル:①人体 / ①半導体製品の使用時 ・マシンモデル:①人体、②装置 / ②半導体製品の実装時 ・デバイス帯電モデル:③半導体製品 / ③半導体製品の保管時
半導体設計でのESD対策
半導体設計でのESD対策は保護素子を入れることになります。
これは静電気が印加された場合にエネルギーをうまく逃がすためです。
静電気が出力端子に印加される例で説明します。
保護素子は出力端子と電源端子の間と、出力端子とGND端子の間に接続されます。
ここで出力端子に静電気が印加されると、電流は保護素子を通ってGND端子に流れます。
このようにして保護素子を使ってうまくエネルギーを逃がすことで、内部回路を静電気から保護することができます。
ここで保護素子とは何なの?と思う方もいらっしゃると思います。
保護素子はトランジスタです。
ただし保護素子に使うトランジスタは次の2つの特徴が必要となります。
1.静電気が印加されたら速くブレイクダウンする
2.保護素子自体が壊れない
1.静電気が印加されたら速くブレイクダウンする
保護素子は静電気が印加されたら速くブレイクダウンする必要があります。
これは保護素子が速くブレイクダウンすることで、内部回路よりも速く電流を流すためです。
2.保護素子自体が壊れない
保護素子であるトランジスタが静電気で破壊されない必要があります。
静電気が印加されて保護素子が壊れてしまうと回路がショートしてしまうからです。
保護素子を入れることで静電気が印加されても内部回路に電流が流れないようにすることで、半導体製品をESDから保護することができます。
まとめ
半導体のESDとは何かを説明しました。
半導体は静電気で壊れる可能性をゼロにはできませんので、きちんと対策する必要があります。
本記事を読んで半導体におけるESDについて少しでも理解して頂けたらありがたいです。
半導体についてはこちらの記事で解説していますので、興味がありましたらぜひ御覧ください。
>>【初心者向け】半導体とは何か、わかりやすくまとめました【簡単です】