「n型半導体が何かを知りたい。
PN接合がよくわからない。
わかりやすい本とかあれば知りたい。」
こういった疑問にお答えします。
本記事の内容
- n型半導体について説明します
- n型半導体を理解する上で注意するべきこと3点
- 本を選ぶときのおすすめポイント3つ
この記事を書いている私は、ディスプレイ用ICの開発を20年近くやってきました。
特許は20件以上出願、登録しています。
こういった私が解説していきます。
n型半導体について説明します
一言でいってしまえば、n型半導体とは「自由電子のほうが数が多い半導体」となります。
ここではシリコンを例に説明します。
シリコンは電子を持つことができる4本の手があるイメージで、電子を介してその手をつなぐことで結合しています。
ここでシリコン原子の一つをリン原子に置き換えてみます。
リン原子は手が5本ありますので、1本手があまってしまいます。
そのあまった手に持っていた電子が自由にどこかいける状態になり、これが自由電子となります。
つまりシリコン原子を1つリン原子に置き換えると、1つの自由電子が発生します。
50個のシリコン原子をリン原子に置き換えたら、50個の自由電子が発生します。
こうすることで半導体内の自由電子を増やすことができます。
この自由電子が増えた状態にある半導体がn型半導体となります。
補足:p型半導体はシリコン原子をホウ素原子で置き換えることでホールを増やした半導体となります。
n型半導体を理解する上で注意するべきこと3点
n型半導体を理解する上で注意するべきことを3点説明します。
- 普通の半導体にも自由電子とホールは存在する
- n型半導体はあくまで自由電子が多くなるだけ
- プラスとマイナスの総和は0になる
1.普通の半導体にも自由電子とホールは存在する
n型半導体になる前の普通の半導体について説明します。
もう一度説明しますが、シリコン原子は4本の手があるイメージでその手をつなぐことで結合しています。
ただしこの結合はそれほど強くないので、ところどころ結合が崩れる箇所が発生します。
この箇所が発生すると、そこには自由電子とホール(正孔)が発生することになります。
自由電子は「動けるマイナス」、ホールは「動けるプラス」と考えて頂ければOKです。
自由電子が200個発生したら、ホールは200個発生します。
普通の半導体は必ず自由電子とホールの数が同じになります。
ここで大切なことは、普通の半導体の状態でも自由電子とホールは存在しているということです。
2.n型半導体はあくまで自由電子が多くなるだけ
n型半導体になる前の普通の状態、つまり自由電子とホールが存在している状態でシリコン原子をリン原子に置き換えていきます。
この図では自由電子が2個、ホールが1個になっています。
自由電子が200個、ホールが200個ある状態で、リン原子を50個置き換えたら自由電子が50個増えて250個になります。
ホールは200個のままです。
ホールが全く存在しないのではなく、あくまで自由電子のほうが数が多いという状態がn型半導体となります。
ここで数が多い方を多数キャリア、少ない方を少数キャリアといいます。
n型半導体とは「多数キャリアが自由電子である半導体」と言い換えることもできます。
MOSトランジスタを理解するうえでは少数キャリアのほうが重要となります。
少数キャリアの存在は忘れないようにしましょう。
3.プラスとマイナスの総和が0になる
先程の例で、リン原子を50個置き換えたら自由電子が250個、ホールが200個になりますと説明しました。
しかしこの状態ではマイナスが多くなっていて、プラスとマイナスのバランスがとれておりません。
50個分のプラスはどこにいったのでしょうか?
答えはリン原子そのものです。
リン原子は動けないプラスとなって存在しています。
つまりまとめますと、下記のとおりです。
自由電子(動けるマイナス):250個
ホール(動けるプラス):200個
リン原子(動けないプラス):50個
これでプラスとマイナスの総和が0になりました。
図にすると下のような感じになります。
この図では自由電子が2個、ホールが1個、リン原子が1個となっています。
自由電子とホールだけをみると数のバランスはとれておりませんが、「動けないプラス」であるリン原子を考慮すると全体のバランスがとれているのがお分かり頂けるかと思います。
この「動けないプラス」を認識しておかないと、PN接合の空乏層が理解できませんので、きちんとおさえておきましょう。
本を選ぶときのおすすめポイント3つ
本を選ぶときにおすすめするポイントを3つ解説します。
- 難しい数式がのっていない
- きちんとドナーやアクセプターについて説明している
- 半導体全般について説明している
・難しい数式がのっていない
目的はあくまでダイオードやトランジスタの動作を理解することですので、そこに必ずしも数式は必要ありません。
なるべく数式ではなく言葉で説明している本をおすすめします。
・きちんとドナーやアクセプターについて説明している
ドナーは動けないプラスで、アクセプターは動けないマイナスのことです。
先程説明したリン原子がドナーとなります。
PN接合を説明する図が載っている場合、そこにきちんとドナーとアクセプターが入っている本をおすすめします。
・半導体全般について説明している
専門的な本よりも広く浅く書かれている本をおすすめします。
一つ一つの説明にそれほどページを割いていないため、的確に説明がされているからです。
知りたいことが数ページしか載っていないこともありますが、こういう本のほうが結構長く使えたりましますので、一冊手元に置いておく価値はあると思います。
ここで少し古い本となりますが、私自身が愛用していた本をご紹介しておきます。
まとめ
n型半導体について説明しました。
PN接合やトランジスタの理解につながるような説明になっておりますので、この記事を読んで理解を深めていただけたらありがたいです。
半導体についてはこちらの記事で説明しておりますので、イメージをつかみたい方はぜひご参考ください。
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